初の1周波RTKの思い出

 平成20年頃だと思います.ローコストRTKを始めた最初の一歩はNovAtelさんのOEMSTARという受信機カードでした.GPS+GLONASSで14chのスペックは,当時でも見劣りするほど何の変哲もない性能です.OEM3時代からすっかりNovAtelさんのユーザだった私にとって何の違和感をなく使い始めることができる受信機でした.

 もちろん,カードを裸では使えません.これをインターフェースカードと一緒に小さな躯体に押し込んだ研究者向けの手作り受信機を導入です.

 当時はRTKといえば受信機内部で測位計算するのが一般的,ただ受信するだけでRTK測位計算ができない受信機には初挑戦です.当然,RTKLIBも初挑戦,思いの外,簡単に使えるのにはびっくりでしたが,設定項目が多くて最適設定がわからず,当初は試行錯誤の連続でした.

 ある会社さんの現場で位置だし業務をお手伝いしていた案件があって,千点近くの位置だしを3日でこなしたい,大きく重いGPSだけのRTK受信機に代えて,OEMSTAR初導入を検討です.とにかく小さくて軽い,バッテリもスマフォ用のUSBバッテリで1日楽に持つ,しっかりFixするし初期化も十分はやい...無謀にもいきなり大現場に投入することにしました.事前テストで自信を持てる性能を垣間見てはいましたが...いつもは慎重な私も冒険したくなりました.

 私自身,当時はまだ電話回線による基準局データの通信も経験が少なく,日本通信格安SIMで自宅のサーバに接続,ソフトイーサVPNするという,今考えるとリスキーなシステムでした.当時は選択肢が幾つもなかったです.案の定,現場で自宅サーバにつながらず午前中を浪費,一次は途方に暮れましたが午後には復活してくれました.

 午後からは怒濤の如くバンバン位置を落としていきます.協力先の企業さんもその実力にはびっくり,今までの2周波RTK受信機は何だったんだという状態です.何と2日で全部落としてしまいました.何でこんなFixするんだ?何でこんな場所でFloatに落ちないんだ?当時は感動を通り越して不思議で不思議で...これまでの常識が通じない,これは1周波RTKの時代が来るかも知れないと感じた瞬間でした.

 ちなみに隣の工区は,トータルステーションで3組9人で同じ規模の仕事を進めていましたが,1週間かかったそうです.現場は林なのですが,真冬で葉っぱが全て落ちていました.こんな環境も衛星測位に味方していました.この差にはびっくりです.

 しかし,その後,使用環境によりFixしない病を発症することがわかり,ここで2年近く足踏みすることになります.キーマンとなる何人かのスペシャリストとの出会いが,この問題を解決してくれます.