通信モジュール

 高精度衛星測位では,基準局データなどの送受信が必要になります.MADOCA-PPP(PPP)やCLAS(PPP-RTK)は,QZSSが放送するLEXを受信することでこれを担っており,いわゆる受信するだけで高精度となる理想的な利用環境を提供してくれます.次世代高精度測位のデファクトスタンダードになるはずです.

 一方,ローカルなRTKでは,自ら基準局を設置して,通信手段を確保して,ハンドシェイクしなければならず,この手間やトラブルは利用者にとって大問題です.

 これを解決する方法で真っ先に思いつくのは特小無線や簡易無線を使うことです.電源ONでリンクが確立できるので接続トラブルがありません.しかし,これも無線が届く範囲の話であって,もし届かないエリアがあれば複数の基準局設置など対策が必要です.数年に渡る長期の運用であればいいのですが,その日限りの利用という場合,現地に入ってみない無線が届くか分からないというリスクを負うことになります.

 最近,相談があって,ある通信モジュールの設定のお手伝いをしました.設定ソフトウェアの信頼性にちょっと(本当にちょっとかな)難ありな商品ですが,提供される機能はとても魅力的です.

 ubloxさんは,コンシューマ向け衛星測位受信機を取り扱うメーカです.近年ではRTKエンジンを搭載したM8Pを低価格で提供したことで注目されているメーカです.このubloxさんは衛星測位受信機以外にも通信モジュールを扱っており,その中にODINという通信モジュールがあります.ubloxさんが扱う通信モジュールでも,無線LAN,Classic Bluetooth,BLEに対応し,マルチに同時利用できる全部入り,ちょっと高価なトップレンジの通信モジュールの一つです.

https://www.u-blox.com/ja/product/odin-w2-series

 これを例えばM8Pとセットにし2台用意して,これを基準局,移動局として使うと,無線LANで基準局データをやり取りしてM8Pで測位計算し,その結果をBLEで投げるということが可能です.マルチ対応なので無線LANBluetoothの同時利用ができるのはいいのですが,ここまでは普通です.でもODINのすごいところは,もう一歩踏み込んだことができることです.

 先程と同じくM8Pとセットにし2台用意して,これを基準局,移動局として使うことにします.基準局データのやりとりをモバイルルータ越しにIP通信でやりとりする場合,一般的にはパソコンやマイコンが必要で,モバイルルータとパソコンを接続し,その上で通信ソフトを動かしてCOMの情報をやり取りします.

 しかし,ODINはモバイルルータ越しに接続を勝手に確立させることができます.パソコン不要です.電源を入れるだけ,無線LANを通してモバイルルータと勝手に接続し,相手のIPを叩いてシリアル通信を開始します.設定さえすれば自動でできてしまいます.もちろん,Bluetoothの同時利用が可能ですので,モバイルルータ,M8P,ODINの電源を入れれば,勝手にRTKを始めてBLEで測位結果を飛ばすところまで全自動にできてしまう,これはいいね.

 問題は一番最初に書いた「設定ソフトウェアの信頼性にちょっと(本当にちょっとかな)難あり」というところです.久しぶりに手こずりました.設定ソフトで手こずるなんてどうしてと思いますよね.設定しても反映されたり反映されなかったりして...ここをどうにか解決できればいいのですが.一回設定できてしまえばOKなのですから.